開発事例
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【開発事例】静的サイトで1週間で技術的負債が発生
〜急速開発がもたらした予想外のリファクタリング〜

Next.jsで構築した静的サイトが、わずか1週間で大規模リファクタリングが必要になった実例。70記事以上のコンテンツと15種類のページを急速開発した結果、何が起きたのか。

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はじめに:「静的サイトなのにリファクタリング?」

「静的サイトでリファクタリングが必要だと思っていなかった」

これが、開発開始からわずか1週間後にクライアントから聞いた言葉でした。確かに、静的サイトは一般的にシンプルで、大規模なリファクタリングとは無縁と思われがちです。しかし、現実は異なりました。

プロジェクトの概要

開発期間と規模

- 開発期間: 2025年6月9日〜6月16日(7日間) - コンテンツ量: - ニュース記事: 52本 - Tips記事: 11本 - ポートフォリオ: 7件 - ページ数: 15種類以上(日英2言語対応で実質30ページ以上) - 技術スタック: Next.js 15.3.3 (App Router) + TypeScript + Tailwind CSS

実装された主な機能

- 多言語対応(日本語・英語) - 動的OG画像生成 - 構造化データ(SEO対策) - AIEOサービスのランディングページ - フィルター・検索機能 - レスポンシブデザイン

なぜ1週間でリファクタリングが必要になったのか

1. データ構造の段階的な変更

初期実装(Day 1-3)
json
// 全記事を1つのファイルで管理
/public/data/news.json
{
  "articles": [
    { "id": 1, "title": "記事1", "content": "..." },
    { "id": 2, "title": "記事2", "content": "..." },
    // 50記事以上...
  ]
}
    問題の顕在化(Day 4-5)
  • ファイルサイズが肥大化(1MB超)
  • Git でのコンフリクトが頻発
  • ページロード時に全記事を読み込む非効率性
リファクタリング後(Day 6-7)
/public/data/news/
  ├── index.json      # メタデータのみ
  └── articles/       # 個別記事ファイル
      ├── 2025-06-16-article-1.json
      ├── 2025-06-16-article-2.json
      └── ...

2. 並行開発による実装の不統一

News機能の実装
tsx
// Server Componentパターン
NewsPage → NewsGridNew → NewsCardNew
Tips機能の実装(別タイミング)
tsx
// Client Componentパターン(フィルター機能のため)
TipsPage → TipsPageClient → TipsFilteredGrid → TipsCardNew
    結果として:
  • 異なるデータ取得パターン
  • UIコンポーネントの不統一
  • スタイリングの差異

3. 急速な機能追加による複雑性の増大

Day 1-3: 基本的なページ構成
Day 4: フィルター機能追加(Tipsのみ)
Day 5: AIEOサービスページ(8つの専用コンポーネント)
Day 6: FAQ機能、構造化データ
Day 7: リファクタリングの必要性が判明

技術的負債の即時返済

通常、技術的負債は数ヶ月〜数年かけて蓄積されますが、このプロジェクトではわずか1週間で限界点に到達しました。これは以下の要因による「圧縮された技術的負債」と言えるでしょう:

  1. 高速な開発ペース: 1日あたり10記事以上のコンテンツ追加
  2. 機能の後付け: 当初想定していなかったフィルターやソート機能
  3. スケーラビリティの軽視: 「静的サイトだから」という油断

学んだ教訓

1. 静的サイトでもアーキテクチャは重要

    静的サイトであっても、コンテンツが増えることを想定した設計が必要です。特に:
  • データ構造の拡張性
  • コンポーネントの再利用性
  • スタイリングの一貫性

2. 早期リファクタリングの利点

    1週間でのリファクタリング
  • 影響範囲が限定的
  • 仕様変更が容易
  • チーム全員が記憶に新しい
    1ヶ月後だったら...
  • より多くの機能が依存関係を持つ
  • リファクタリングコストが指数関数的に増大
  • ビジネスへの影響が大きい

3. 開発速度と品質のバランス

急速な開発は可能ですが、以下の点に注意が必要です:

    ✅ 良かった点
  • 素早い価値提供
  • フィードバックの早期取得
  • 市場投入までの時間短縮
    ❌ 改善が必要だった点
  • 初期設計への時間投資不足
  • コンポーネント設計の統一性
  • ドキュメンテーション

実際のリファクタリング内容

Phase 1: 共通基盤の構築

css
/* globals.css に共通スタイルを定義 */
.container-base {
  @apply max-w-7xl mx-auto px-4 sm:px-6 lg:px-8;
}

.card-base {
  @apply bg-white rounded-2xl shadow-sm hover:shadow-xl transition-shadow;
}

Phase 2: コンポーネントの統一

- 共通グリッドコンポーネントの作成 - カードデザインの標準化 - データ取得パターンの統一

Phase 3: 最適化

- 不要な中間コンポーネントの削除 - パフォーマンス改善 - 型定義の整理

まとめ:静的サイトの新しい課題

現代の静的サイトジェネレーターは非常に強力で、動的サイトに匹敵する機能を実装できます。しかし、それは同時に動的サイトと同様の複雑性をもたらすことも意味します。

「静的サイトだから簡単」という先入観は捨て、適切なアーキテクチャ設計と継続的なリファクタリングが必要です。

重要なのは、技術的負債の発生を恐れることではなく、早期に認識し、迅速に対処することです。

このプロジェクトは、1週間で技術的負債が発生し、即座にリファクタリングを実施した稀有な例として、多くの示唆を与えてくれました。