AI協働
8 分
AIとの協働開発で失敗しないための「確認必須ルール」
AIがページネーション機能を削除した事例から学ぶ、人間の経験則をAIに伝える方法。実際の失敗事例と、それを防ぐための確認プロセスを紹介します。
AI開発開発プロセスチーム開発ベストプラクティス
はじめに:AIが犯した「常識的な」ミス
- 2025年6月、私たちのプロジェクトで興味深い事件が起きました。AIがニュース記事のデータ構造を最適化する際に、ページネーション機能を削除してしまったのです。
人間のエンジニアなら「あ、これは必要だから残しておかないと」と自然に判断するところを、AIは「技術的に不要」と判断して削除してしまいました。
なぜこんなことが起きたのか
人間の思考プロセス
経験を積んだ開発者は、以下のような思考を自然に行います:
- 「このページネーション機能は何のためにあるんだろう?」
- 「記事が100件、1000件になったときのことを考えると...」
- 「ユーザー体験を考えると、これは必須機能だな」
AIの思考プロセス
一方、AIは以下のように考えました:
- データ構造を効率化 → サーバーサイドレンダリングで最適化
- 古いコンポーネントは技術的に古い → 新しく作り直す
- 機能の意図や必要性を考慮せずに実装
問題の本質
AIには以下の特性があります:
- 文脈の継続性を理解しない - 既存機能が「なぜそこにあるのか」を理解できない - 技術的な側面のみに注目し、ビジネス要件を見落とす
- 「常識」を持たない - 「大量のコンテンツにはページネーションが必須」という経験則がない - 人間なら当然考慮する「将来の拡張性」を考えない
- 実装を優先する性質 - 技術的に可能なことはすぐに実行 - 「立ち止まって考える」ことをしない
解決策:確認必須ルール
1. 確認が必要な5つの状況
markdown
1. **機能の削除**
- 既存の機能、コンポーネント、ファイルを削除する場合
2. **大きな構造変更**
- ディレクトリ構造の変更
- データ構造の大幅な変更
- アーキテクチャの変更
3. **矛盾や不明点の発見**
- ドキュメントと実装の矛盾
- 要件の曖昧さ
- 複数の実装方法がある場合
4. **破壊的変更**
- 後方互換性を失う変更
- APIの仕様変更
- 既存データに影響する変更
5. **セキュリティ関連**
- 認証・認可の変更
- データの公開範囲の変更
2. 確認プロセスの実装
markdown
⚠️ 確認が必要です:
**状況**: NewsGridコンポーネントのリファクタリング
**発見**: 既存のページネーション機能があります
**技術的判断**: サーバーサイドレンダリングでは不要
**懸念**: ユーザー体験への影響が不明
以下の選択肢があります:
1. ページネーション機能を維持して実装
2. ページネーション機能を削除して実装
3. 別の方法で実装
どれを選択しますか?理由も教えてください。
3. トリガーベースの思考
削除トリガー:
思考:「この機能は新しい実装では不要だ」
→ 停止:「なぜこの機能があるのか?削除して問題ないか?」
→ 確認:人間に削除の是非を確認
実装例:プロジェクトへの適用
CLAUDE.mdへの追記
markdown
## 🚨 AI開発における確認必須ルール
### 以下の状況では必ず人間に確認を求めること
1. **機能の削除**
- 既存の機能、コンポーネント、ファイルを削除する場合
- 例:「このページネーション機能は新しい実装では不要と判断しましたが、削除してよろしいですか?」
要件の明文化
markdown
#### 5. **ページネーション必須**
- **重要**: コンテンツ一覧ページには必ずページネーション機能を実装すること
- 1ページあたりの表示件数: 9-12件程度(モバイルでも見やすい数)
- ページネーションがないと、記事が増えた際にパフォーマンスとUXが著しく低下する
- リファクタリング時も**既存のページネーション機能は必ず維持する**
効果と期待される成果
- 重要な機能の保護 - ビジネス的に重要な機能が勝手に削除されない - ユーザー体験の継続性を維持
- 開発の安全性向上 - 破壊的変更による障害を防止 - レビュープロセスの効率化
- 知識の蓄積 - なぜその機能が必要なのかを文書化 - チーム全体の知見として共有
まとめ
AIとの協働開発では、技術的な実装能力は高いものの、文脈理解や機能の意図把握には限界があります。
- 「確認を求める文化」を確立することで:
- AIの「実装優先」の性質を適切に制御
- 人間の経験と判断を適切なタイミングで活用
- より安全で品質の高い開発を実現
AIは強力なツールですが、人間の経験と判断を代替するものではありません。両者の強みを活かす仕組みづくりが、成功の鍵となります。
今後の展望
この確認ルールは、AI開発の成熟とともに進化していく必要があります。実際の運用を通じて得られた知見を継続的に反映し、より効果的なルールへと改善していきましょう。
人間とAIが真のパートナーとして協働できる未来に向けて、一歩ずつ前進していきます。