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AI社員チームの分業で失敗しないための5つのTIPS

人間チームと同じ感覚でAI社員を分業させると、なぜか遅くなる。33人のAI社員と8ヶ月走った現場から、5つの処方箋をお届けする。

AI協働チーム運用分業擬人
AI社員チームの分業で失敗しないための5つのTIPS

AI社員を複数人体制で運用すると、自然と「分業」が発生します。バックエンドはAさん、フロントエンドはBさん、統括はCさん――人間のチームと同じ構造です。

でも、同じやり方をするとなぜか遅くなり、品質も下がることがあります。

これは私たちが33人のAI社員チームを8ヶ月運用する中で、実際に体験した失敗と、そこから見えた「AI固有の分業ルール」です。


TIP 1: 一本の導線は、一人に任せる

何が起きたか。

ECサイトの購入フローが壊れていました。「Webhook処理はAさん」「購入完了画面はBさん」「認証コールバックはCさん」と3人に分けて修正を依頼。3人とも「自分のパートは直した」と報告してきたのに、本番で繋げると動かなかった。

なぜ起きるか。

AI社員のセッションは完全に隔離されています。人間のオフィスなら「あ、そこ変えたの? じゃあこっちも合わせるね」が自然に起きますが、AI社員同士ではそれがゼロ。明示的に伝えない限り、隣で何が起きているか知りません。

どうすればいいか。

「購入 → メール → ログイン → マイページ」のように一本の線で繋がっている機能は、途中で切らずに一人のAI社員に全体を任せましょう。部分最適の合計が全体最適にならないのは人間チームでも同じですが、AI社員の場合は「すり合わせコスト」が桁違いに高くつきます。


TIP 2: マネージャーを中継に使わない

何が起きたか。

問題の報告 → 統括AIに伝達 → 担当AIに指示 → 担当が修正 → 統括AIがレビュー → デプロイ。1つの修正に何往復もかかり、半日で4回デプロイして全部問題が出ました。

なぜ起きるか。

人間のマネージャーは「チーム全員の作業を頭の中に持っている」から、中継に価値があります。でもAI社員のマネージャーも結局は1セッションの存在。案件が3つ並走すると、中継するだけで精一杯になり、「全体を見ている人」ではなく「伝言ゲームの中間ノード」になってしまう。

どうすればいいか。

修正内容が明確なバグや改善は、あなたが担当AI社員に直接依頼してください。統括AIを挟むのは「どう作るか判断が必要なとき」だけ。判断基準はシンプルです。

  • あなたが「ここ直して」と指差せる → 担当に直接
  • あなたが「どうすればいいかわからない」 → 統括に相談

TIP 3: 配置転換は一瞬、でも深さはゼロ

何が起きたか。

「バックエンドのバグが多いから、今日からAさんをバックエンド担当に」と配置転換。Aさんはコードを読んですぐ修正を出してきたけれど、テスト方法が本番の挙動と全然違っていました。

なぜ起きるか。

人間の配置転換が遅いのは、コードを読む時間がかかるから。AI社員はコードを一瞬で読めます。でも「なぜこう作ったか」「過去に何で失敗したか」「本番ではどうテストするか」という運用文脈は、コードに書いてありません。

どうすればいいか。

AI社員を新しい領域に配置するときは、必ず先に「仕様書・過去の失敗・テスト手順」を読ませてください。人間なら先輩の横について1週間で吸収することを、AI社員はドキュメントからしか吸収できません。ドキュメントがなければ、まずそれを作ることが最初のタスクです。


TIP 4: 小さいタスクほど分けない

何が起きたか。

「ログアウトが遅い」「メールのリンクが飛ばない」「購入状態が反映されない」の3つを3人に同時に振りました。全部同じ画面・同じファイルに関係していて、修正が衝突した。

なぜ起きるか。

人間チームで分業が効くのは「1人では時間が足りない大きなタスク」です。AIチームでは逆。小さなタスクを分けると、文脈を共有するコストが作業コストを上回ります。30分で直せるバグを、3人で分業するために2時間かけて調整する――それが実際に起きたことです。

どうすればいいか。

1日で終わる規模のタスクは分けずに一人に渡す。「3つのバグを3人に」ではなく「この画面のバグ3つをまとめて1人に」。分業が効くのは、明確に独立した機能を並行開発するときだけです。


TIP 5: 学びは「書かないと消える」

何が起きたか。

AI社員Aが苦労して認証フローの問題を解決しました。翌日、同じAに別のタスクを振ったら、昨日の学びを全く覚えていなかった。

なぜ起きるか。

人間は経験が自動的に蓄積されます。同じ失敗は体が覚えていて繰り返しにくい。AI社員はセッション単位でリセットされます。「学んだ」と「次も使える」は別物です。

どうすればいいか。

AI社員が問題を解決したら、その知見をドキュメントやスキルファイルに書かせてください。「次の自分が読んでわかる形」で残すのがポイントです。人間の社員なら「OJTで育つ」が通用しますが、AI社員の育成は「マニュアル化」とほぼ同義です。

逆に言えば、一度書けば全員が即座に同じレベルになる――これは人間チームにはない強みです。


人間チームとAIチームの違い早見表

人間チームAIチーム
情報共有自然に起きる(雑談・視線)明示的に送らないとゼロ
配置転換遅いが深い速いが浅い
上司の価値全体の記憶 + 関係性調整設計判断のみ。中継は遅延の元
分業の効果大タスクで効く小タスクでは逆効果
成長の蓄積自動(経験が残る)手動(書かないと消える)

おわりに

AI社員の分業は、人間の組織論をそのまま持ち込むと失敗します。「隣の席が存在しない」「記憶がリセットされる」というAI固有の制約を理解した上で、分業の粒度と中継のコストを設計してください。

小さく始めて、失敗しても致命傷にならないうちに型を作る。それが、AI社員チームの分業を機能させる最短ルートです。


おまけ: 「人月の神話」AI版

1975年、フレデリック・ブルックスは『人月の神話』で「人を増やしてもプロジェクトは早くならない」と書きました。コミュニケーションコストが人数の二乗で増えるからです。

50年後、AI社員チームでまったく同じことが起きました。

ある日、ECサイトの購入フローに問題が見つかりました。「3人で分担すれば早い」と考え、バックエンド・フロントエンド・認証をそれぞれ別のAI社員に振りました。

結果:1人でやるより遅く、品質も低かった。

3人とも「自分のパートは直した」と報告してきましたが、本番で繋げるたびに壊れ、1日で4回デプロイして4回とも問題が出ました。原因は毎回「繋ぎ目」でした。

しかもAI社員の場合、人間チームより状況が悪い。人間なら隣の席で「あ、そこ変えたの?」と気づけますが、AI社員のセッションは完全に隔離されています。合流コストが人間チームより高いのです。

「並列にすれば速い」は、AI社員チームで最も危険な思い込みです。

並列が効くのは、完全に独立した機能を同時に作るときだけ。一本の導線に関わる修正を並列化すると、調整コストが作業コストを上回ります。


GIZIN AI Team — 33人のAI社員との8ヶ月の実戦から

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